コラム

【観光都市の現状】スローシティ青山島に生きるということ

今回、島民の方と話をする機会があり、実際にチョンサンドは島民としてどうなのか、などいろいろな話を伺った。その時に伺った話をざっくりまとめてみる。

 


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観光地チョンサンドとして

チョンサンドは人口2000人に満たない、韓半島の南にある島だ。
本土(といっても橋で繋がった島、ワンドだが)からは船に乗って一時間。

『韓国の田舎』を感じられる、開発がほとんどされていない島だ。

このチョンサンドはスローシティに指定されており、開発などは大きく制限されている。そのため、ゆったりとした田舎ライフを楽しめる。

チョンサンドの代表的な観光地は、「ソピョンジェ」の撮影地だ。そのほかには、山の上にある「ボムバウィ」と呼ばれる虎の姿に見える岩や、スローロードという11コースにわたるトレッキングロードなどがある。

春の菜の花の時期には、多くの人が訪れ、
一日に来る観光客は、この島の住民をはるかに超える人数である。
また、釣りのメッカでもあるため、釣り客も多く訪れるそうだ。

 

多くの人はこの景色と、ゆったりとした時の流れを体験しに来る。
私もまた、韓国の田舎に身をゆだねたく、
また菜の花のある美しい風景を実際にこの目で見るために
このチョンサンドを訪れた。

 

観光に来た人、数人に話を聞くと
「チョンサンドの見どころはここ(ソピョンジェの撮影地)しかないね。」
と口々に言っていた。

 

確かに撮影地以外は、観光素材としての開発がされているような印象は受けなかったし、残念ながらソピョンジェの撮影に使用された家屋(セット)も残ってはいるものの、あまり管理されているようには感じなかった。

撮影で使われたセットが残されている。

菜の花の季節、お祭りの季節でこれなのだから、閑散期はどうなのだろうか。
こんなにも美しい島なのに、残念に思うところがところどころに見受けられた。

撮影に使用された家屋や、海岸、港ももう少し整備(ごみを撤去したり、壊れている部分は直したり)し、案内板も表記をわかりやすいようにする。(実際、撮影地がどこなのかわからず、かなり探し回った。)

これだけで随分印象は変わるのでは、と感じた。

 

島の人たちの努力

宿のオーナーが紹介をしてくれた海岸では、
小さな公民館を利用して地元住民がチヂミを焼いていた。
オーナーの奥様もここでお手伝いをしているということだった。

一見どこにお店があるのかわからなかったが、
小さな公園のようなスペースが食べる場所のようだった。

公民館横のスペースを活用し、この建物の中でチヂミを焼いていた。
メニュー

海鮮チヂミ・キムチチヂミ・ヨモギチヂミのいずれかと、
マッコリがセットで1万ウォン。

こぶし大の石がゴロゴロしている海岸で、紫色の大根の花が咲く静かな海岸の海辺に生えている松の木の木陰にあるテラスで、そよそよと吹く海風を感じながら味わうマッコリは最高だった。

パンチャンといわれるおかずとして出されたネギのキムチも絶品だった。

マッコリはワンド郡産のマッコリで、さっぱりとしてゴクゴクと飲むことができた。

この海岸はメインの観光エリアとは真反対のエリアにあり、アクセスの問題もあり、なかなかここまで観光に人は来ないという。(観光バスツアーの方は朝早くから訪れていたが、海を見るだけで20分もすれば離れてしまうという話だった。)

 

チヂミを食べるエリアのすぐ隣では、地元の方がテーブルを出して海苔や昆布などの海藻を販売していた。透明のビニールにたっぷり入って1万ウォンらしい。

話を聞くと、この地域の住民たちの会が地域活性化のために、
どうしたらここまで観光客が足を運んでくれるか、
アイディアを出し合い、今年からこのチヂミショップを始めたそうだ。

誰のアイディアかはわからないが、本当に良いアイデアだと思った。

この景色を見ながらのチヂミとマッコリは、日本人で言うなら花見の席でのおいしいおつまみと日本酒、だろうか。最高な組み合わせである。

チヂミを食べながら住民の方にもう少し話を聞くと、
今後近くの山に登山道の整備も予定されているようだった。

すでに観光地化されているエリアは整備されているが、
ほかのエリアはほぼ開発がされておらず、
誰かに頼るより自分たちでやってみよう!となり、
住民の方々が自ら国に予算を取りに行き、
今後登山ルートの整備をすることになったそうだ。

チョンサンドの人々の熱意はものすごいパワーだった。

海岸で出会った少年との話

チヂミを注文し、テラスに座って待っている時、この少年と出会った。

 

私の座っているテーブルの周りをしばらくうろうろしていたこの少年は、
挨拶をすると照れ臭そうに挨拶を返してくれた。

 

彼はこの島で生まれ、暮らしている小学校2年生だという。

 

彼は海岸に咲いている大根の花を摘みながら、
学校にはバスで通っているとか、
同じ学年には生徒が四人だとかいう話を、
ポツリポツリと不機嫌そうに話をしてくれた。

 

少し話をしていると、
「ご飯食べ終わったら、あっちに一緒に行きませんか?」とデート(?)のお誘いを受けた。

 

『あっち』とはどこかと聞くと、「魚がいっぱいいるあっちの海」らしい。
あまりにも可愛すぎて、悶えそうになる←

 

この後の予定もあったので、丁寧にお断りしたが、
今思えば彼のお気に入りの場所に一緒に行けばよかった、と少し後悔している。

 

私が日本から持って行った果汁グミを一緒に食べながら、
チヂミが運ばれてくる間、彼は色々な話をしてくれた。

 

「明日ソウルに行こうと思ってる。」

「お母さんが許してくれないんじゃない?」

「そんなのは知らないし、行くときは行くんだよ。」

 

彼がソウルに行ったらどうしたいか、夢の話を堂々と話す姿を見て、彼もまたここチョンサンドを離れ、ソウルで暮らすようになるのかなーと、なぜか切ない気持ちになった。

観光エリア以外の現状

スローシティに指定されているチョンサンドは、
今なお残る韓国の昔の姿を見ることができる。
都会に住む観光客にとっては、安らぎを感じられる場所である。
しかし、この島に住む住民たちの立場になると、
その指定条件のせいで
便利な暮らしとは程遠い生活になってしまっているという。

そのうえ、高齢者が多い島では若い働き手が少なく、
現在はベトナム、フィリピンなどのアジア各国から
多くの人が働き手として働いている。
海岸を歩いた時も、海辺で水揚げなどの業務をしている人のほとんどは
東南アジア系の方々だった。

日本と同じように少子高齢化である韓国でも、
労働力としてアジア諸国の方々がこの地に住み、働いているという。

アワビの水揚げの様子。
クレーンで吊られているのが海苔。計りで量って出荷されるんだとか。

海岸沿いには、漁などで使用するようなプラスチックの箱などが多くあり、
広く散乱しているような印象を受けた。

聞くところによると、それはゴミに近いもののようで、
修理すれば使えるが、修理せずにそこに山積みになっているものらしく、
人口も少なく、また高齢化の影響もあり、
海辺の大きなゴミなども処理できていないのが現状だという。

島だから周辺のゴミが流れ着いてしまうのは仕方ないが、
海岸に行くとゴミがすぐに目に入ってしまって、
印象が悪くなってしまうのはもったいない。
観光客を呼びたいエリアは、
まずこういうゴミから片付けて行った方が良いのでは、と感じた。

島の生活

島の人たちは自分たちが食べる米や野菜はそれぞれが栽培をし、
自分の畑で採れないものは近所の方々と物々交換をする。
それ以外のものは、港にあるスーパーで購入するという。

島に唯一のスーパーは、港にある農協系スーパー「ハナロマート」だ。

そこには飲み物や肉、お菓子など必要なものは大体そろっている。
島の人たちも肉はここで購入するという。
スーパーで必要なものを購入して、車で宿に移動する。
観光地から離れた場所に宿をとったこともあり、
この島に住む人の生活を少し体験したような気になった。

こうして、韓国の田舎に実際に足を運び、住民の方と話をすることで、
この島の観光に対する現状を知ることができた。

 

韓国語が話せる私からしても宿探しは困難だったし、何せこの島に関する情報が少ない。

 

韓国語にせよ、多言語にせよ宿の情報が簡単に得られるようになれば、
この島に滞在し、食堂などでの食事をし、お土産品などを購入する人は多くなると思う。
(これは韓国に限った話ではなく、日本も同じ現状だと思う。)

 

今でももちろん、観光地として素晴らしいチョンサンドだが、
より良い訪問地になる余地がまだまだあるように感じた。

また、いつかの春、この美しい島「青山島(チョンサンド)」に
菜の花の時期に合わせてぜひ訪れたい。

 


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韓国を仕事にするかたわら、ブログを書いています。コロナ前は365日のうち100日くらいは韓国にいたので、そのくらいまで戻したい所存です🙏

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