小石原焼 やきもの

【小石原焼・高取焼】民陶祭に向けた職人たちの日々

やきもの

以前、知り合った女性(東峰村在住)が、
民陶祭に向けて準備を進める
東峰村のやきもの職人の方たちの日常を教えてくれた。

今日ここに紹介する内容は彼女が教えてくれたもの、
また掲載している写真の大部分は彼女が提供してくれたものである。


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東峰村とやきもの

東峰村は、福岡県内でも有数の焼き物の産地だ。
とくに、小石原焼(こいしわらやき)という雑器を作ってきたやきものと、
高取焼という抹茶碗や茶道具を作ってきたやきものの産地が
同じ地域にあるという、珍しい産地でもある。

この東峰村については、いくつか記事を書いてきたので、
民陶祭や村については、そちらを参考にしてほしい。

今日は、東峰村に暮らすやきものの職人たちと、
その製作工程にフォーカスを当てたい。

 

小石原焼と髙取焼

小石原焼も、髙取焼も陶土と言われる土から作る「陶器」だ。
一方、陶石と言われる石を砕いて作られるのは「磁器」と言われる。
(主に有田焼などの白い器)

 

小石原の土は鉄分が多く、釉薬がかかっていない部分は
焼き上がると黒っぽい色になる。

小石原焼は、その昔は
お隣にある霊峰 英彦山で修業をしていた山伏たちが使う、
日本酒を入れる一升徳利、山芋を摺るための擂り鉢、
土管、水瓶などのいわゆる大物を作っていた。
そのせいもあってか、
現在の小石原焼もぽってりとしたその面影を感じる。

特徴的な「飛び鉋(とびがんな)」や「刷毛目(はけめ)」は、
小石原焼の代表的な模様と言われている。

「飛び鉋」はまだ乾ききっていない釉薬の表面に、
金属や竹で間隔の空いたひっかき模様をつけることで、生み出される。
実際にやってみると、ろくろの速さと力の加減が非常に難しいことがわかる。
やはり職人はすごい、と実感せざるを得ない。

「刷毛目(はけめ)」は、名前の通り、
白い化粧土をかけ、乾く前に刷毛で模様をつける。

このほかにも、「指書き」という指で筋を描いた模様や、
「櫛目(くしめ)」という竹などで細い筋模様をつけたものや、
「打ち掛け」といった釉薬をバシャっとひしゃくで打ちかけた模様
なども、特徴的な模様といわれている。
 

飛び鉋(とびがんな)と呼ばれる小石原焼の特徴的な模様。

 

一方で、髙取焼も小石原焼同様、陶器であり、
土から作られているはずなのに、
うすはりグラスのような繊細さが特徴だ。

高取焼宗家のぐい飲み

持ち上げた時に、思っていたよりもはるかに軽く、
持ち上げてみたところであまりにも軽いのでうっかり落としてしまった、
という話はよく聞く。

また、髙取焼は薪窯で仕上げるため、ひとつひとつ個性がある。
茶碗の中に、炎と釉薬が映し出す『景色』が広がり、
その景色の中の物語を想像させる。

高取焼宗家の茶碗。
釉薬の流れで表現された世界が「景色」

 

また、高取焼宗家は土も、唐臼(からうす)という、
川の水を原動力とした臼を使って砕いている。

昔は小石原の皿山地区だけでも、12基の唐臼があり、
日々この村の産業を支える『土』を作っていたという。

高取焼宗家の唐臼

 

用の美

民藝のことをよく知っている人なら、
小石原焼が「用の美」として、評価されていることを知っているだろう。

「用の美」とは、職人が使いやすさを考えながら、努力を重ねた結果、
美しさを宿した「かたち」が生み出されるという柳宗悦をはじめとした
民藝活動家たちが提唱した考え方で、
つまり、「使ってこそ、その美しさが最大限に引き出される」ということだ。

 

日本では、器を手で持ち、器に口をつけて食べることが多分にある。

 

例えば、器が使い捨て用の発泡スチロール容器だったら?
プラスチックだったら?

 

 

中身は同じだとしても、実際に感じる味や雰囲気などは大きく変わる。
人間は目でも「食べる」動物だと思う。

 

チョコモナカジャンボもこの通り(?)

 

飲食店に入ったときに、気の利いたうつわだと嬉しいし、
東京にある九州料理店で九州の焼き物が使われていると、
「お!?わかってるねぇ。」と内心思っている。

さらに、手作りのうつわだろうと思うと、
高台(うつわの下の部分)にあるだろう印を確認してしまうのは、
うつわオタクなら誰しもやってしまう行為だろう。(←そうなの?w)

 

私が韓国に留学をしたこともあり、仕事でも韓国と接することが多いので、
韓国の文化と比較することになるが、韓国はテーブルに器を置いて食べることが
マナーなので、日本のこの文化は意外と日本ならでは、ということを、
韓国文化に接するようになってから学んだ。

 

茶碗、汁椀、おちょこ・・・・
手で器を持ち、口をつけることで、その器を肌で感じることができるのは、
職人の人たちがどう考えて器を作ったのかを感じられる良い機会だと思う。

 

民陶祭前の職人たち

民陶祭前になると、各窯元は大忙しだ。
本来の注文の数はそのままに、民陶祭分の器も作る。
忙しくないはずがない。

特に春の民陶祭は、秋の民陶祭に比べ、
来村者数も大きく上回るため、その準備は毎日夜遅くまで続く。

 

光の漏れる夜の工房
ヤマサン柳瀬本窯元の柳瀬さん
カップの取っ手を付ける、やままる窯の梶原さん
早川窯の早川さん

 

轆轤(ろくろ)を引き、器を作り、
天気のいい日には、それを並べて干す。
そして、釉薬を掛けてまた干す。

窯に入れ、様子を見ながら焼いてゆく。
そして、急な温度変化で割れないようゆっくりと冷まし、窯から取り出す。
取り出したら、触感が滑らかになるように、
高台(器の下のふち)を削る。

器の完成までには多くの工程があることは、忘れてはいけない。

高取焼八仙窯の八仙さん

こういった工程を見ていると、
本当に、器、ひとつひとつに魂を感じてくる。

一球入魂とでも言おうか。
そのひとつひとつに職人の人生や経験が詰まっているのだ。

マルダイ窯の太田万弥(かずや)さん
上鶴窯 和田祐一郎 さん

上鶴窯はリニューアルオープンしたばかりだそう。ぜひ訪れてみて。

辰巳窯の長沼さん
たまに文字を崩して分からないように窯名を入れるんだとか。

器を窯に入れるときは、このように隙間なく入れる。
大物の隙間にはし置きなどの小物を詰めて。

圭秀窯 梶原さん

こうして積み上げたやきものたちを、窯の中に入れる。

現在では安定した仕上がりになる窯(ガス窯や電気窯)
を利用する場合が多いが、薪で器を焼くこともある。

薪でうつわを焼くときは、24時間以上、昼夜を問わず、
ほぼ不眠不休で行われ、
窯の周りは真冬でも高温になるため、
暑さ(熱さ)と疲労との戦いだ。

薪で焼いた器は、炎の当たり方、強さ、ススの影響などを受け、
独特で、個性的な作品に仕上がる。

焼かれるうつわたち

火の強さ、流れ、温度を確認しながら、
温度が維持されるように薪を入れ続ける。

時には藁なども使ったりして、意図的に模様を作り出したりもする。

うつわが焼き終わると、窯の隙間を粘土で閉じ、
ゆっくりと窯の温度が下がるのを待つ。
急な温度変化で割れてしまうのを防ぐためだ。

こうして薪で焼くうつわたちは産声を上げていく。

窯から出したてのうつわたちは、まだ素手で持つには熱い。
窯から出した状態で、少し置き、器の温度を下げる。

その時にどこからともなく、「チン」「チン」と小さな音がする。
風にゆられる風鈴のような、
グラスで乾杯をするときのような…
耳を澄まさないと聞き逃してしまいそうな音がするのだ。

貫入音(HD)
YouTubeより

この音は「貫入(かんにゅう)」といって、
温度変化で釉薬にひびが入る時にこの音が鳴る。
この音は、『残したい日本の音の風景100選』にも選ばれている。
(佐賀の伊万里焼の貫入音だが)

窯から出され、少し冷まされたうつわは、まだあたたかい。

東京から九州にきた私は、東峰村の人たちにとっては
日常の「当たり前」であろうこんな体験すら、「感動」だった。
東京にいたらまず、こんな『焼きたてほやほや』のうつわに
触れることはないだろう。

ある窯で、こうして通常は薪を入れるが、
かつて「茶器を焼く時に、茶道で使う茶筅(茶せん)供養として、
その茶せんを薪と共にくべた」という話を聞き、
輪廻転生というべきなのか、とにかく感動したことがある。

この村に行くと、このリサイクルというか、
輪廻転生というか、自然の偉大だと先人たちの知恵というか。
そういったものを感じることが多い。

土、太陽、水、炎、雨、緑。

この村に行くたびに、
多くの自然の力が集結して、
『生活』があることを感じるのだ。

特に私は、東京からここ福岡に移住してきて、
この東峰村と出逢い、100圴の器でいいや!と思っていたにも関わらず、
今では家の床が抜けそうなくらいの器があるし、
自分で梅干しを漬けるようになったり。
保存食も作るようになったし、
味噌汁も出汁から取るようになった。(毎回じゃないけどね。)

以前、マルダイ窯のおかみさんにいただいた、
手作りのこんにゃくの山椒酢味噌和えと藤の花のお茶

 

とにかくすごいパワーを持っている村なのだ。

今回の民陶祭でここ東峰村を訪れる人も多いと思うが、
私が感じたような感動を少しでも感じてもらえればと思う。

 


Photo:Goto Saori / Takatori Nanae / AYA / Fukuoka pref. Free photo

 

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Profile
すず

1988年1月生まれ。神奈川県横須賀市出身。青森にもルーツ有。
元美容師。海外で美容師として働く夢を叶えるべく、都内短大(英文学)卒業後、都内美容学校へ。都内サロン退職後、2014年に韓国留学。留学終了後、帰国。都内韓国関連会社勤務後、横浜から福岡に移住し、現在は日本国内で韓国関連、日韓交流、観光インバウンドの仕事に携わる。韓国の田舎の姿にハマり、現在は、週末・休暇を利用して、韓国の地方都市の旅をしている。好きな食べ物はスンデ。

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